札幌から約50分。千歳から約50分の農業の町。

地域おこし協力隊の青木千佳さん

スマホ片手に2年半、南幌町の春夏秋冬を撮影
SNSで発信、800投稿以上

なんぽろ人 #1

< 地域おこし協力隊・青木 千佳さん >

 平成30年9月5日、「北海道胆振東部地震」が発生した前日。南幌町が募集していた地域おこし協力隊に応募した青木千佳さんは、面接のために初めて南幌町に訪れていました。翌日に大地震を体験するとは思いもせず、目の前に広がる田園風景に心が踊っていました。

 暮らしていた埼玉県で知った南幌町。その時に目にした写真が脳裏に焼きついて、「こんな景色のそばで暮らしてみたい」。夕日に赤く染まり、どこまでも続くかのような田んぼの風景。写真でみた世界がその日、青木さんの目の前に広がっていました。


この景色は「当たり前」なんかじゃない。

 宿泊していた札幌市内のホテルで地震が発生。停電やインフラの混乱に見舞われ、埼玉県の自宅に戻ることもできない日がしばらく続きました。「このまま南幌に来てくれないかもしれない」と役場職員が心配したほどでしたが、青木さんの思いが揺らぐことはありませんでした。「あの素晴らしい景色がある街の魅力を、たくさんの人に知ってもらいたい」。再び南幌町を訪れたのは、大地震から1ヶ月後。秋の気配が田園風景に漂っていました。

 地域おこし協力隊としての任務の一つは、南幌町のP R。特産品やイベントをアピールし、町の魅力を道内外に発信していくことでした。まさに、青木さんが南幌町で「やってみたい」と思っていたことの一環。

 青木さんがまず始めたのは、南幌町を身近に触れて知ること。車ではなく、歩くか自転車で町内を巡ることでした。そして、気になる場面に出会うたびにスマートフォンで写真を撮影。それらの写真を、南幌町に来てから立ち上げたSNS「Instagram」のページに投稿していきました。最初に投稿した写真は、虹がかかる夕方の空。南幌町の夕焼け空に憧れて引っ越した青木さんの思いが感じられる一枚です。

 田んぼ、小道、草木、歩いている人、公園、空。青木さんの投稿を見ていくと、歩いているからこそ気がつける身近な南幌町の風景があります。これらの風景は、南幌町に住んでいる人たちにとっては当たり前の見慣れたものかもしれません。でも、そのような「生活に近いところにある何気ない瞬間」にカメラを向け続けてきました。

 「晴れていても、雨でも、雪でも。町外の人にはリアルな南幌町を知ってもらいたい。それが、南幌町を訪れる参考の一つになるかもしれないから」。風が強い南幌の冬にたびたび発生するホワイトアウト現象。そんな白の世界をおさめた一枚を見ていると、スマホ片手に地吹雪に立ち向かう青木さんの姿が思い浮かべられます。

 春夏秋冬がめぐり、令和3年4月で2年半。初めての投稿から毎日のように撮り溜めてきた写真データでスマホ1台が満杯となり、2台目が今の相棒。投稿は800件を超えました。町外から移り住み、撮影をし続けてきた青木さんが写真にこめている思いは「この景色は、特別なんだ」ということ。

 広い大地は、農家さんが毎年真剣に耕して農作業をしているから。土を大切に育てているから。何もしないであの夕焼けの景色が維持されているわけではない、と。「広い空の向こうに沈んでいく夕日の風景は、ただ何もないいつもの景色。そのように感じていらっしゃる町民もいるかと思いますが、町外の私にとっては宝物です」

野菜の新鮮な街、        
もっと気軽に体験してもらいたい。

 青木さんの任期は、令和3年9月末まで。それまでに、南幌町の特産物を活かした商品開発にも力を入れる予定です。青木さんは令和2年夏、町内農家さんの野菜(トマト)を使って、町内のアイスクリーム工房「アイスキャロル」と一緒にトマトアイスを開発。ふるさと物産館「ビューロー」で販売をしています。

 残りの在任期間を活用して、トマトアイスの改良やビューローで町内産野菜を食べて買えるようにできるような仕掛け作りを考えています。「ビューローのレストランで気軽に野菜が食べられて、それを売店で買えるような。私が役職を終えた後も引き継いでもらえるような取り組みをしていけたらと思っています」

 地域おこし協力隊の任期を終えた後も、南幌町内に住み続ける計画。陶芸の技術を活かして、町内で窯を開くアイデアも。「陶芸を通しても、新しいカタチで南幌町の魅力を伝えていきたい」と思い描いています。
(取材:令和3年4月)